2019年2月9日から5月26日まで、六本木・森美術館で開催されている「六本木クロッシング2019展:つないでみる」にいってきましたので、いくつか作品を紹介しながら、感想をつづっていきます。
日本生まれの現代アーティスト25組、60点の作品で構成されており、社会におけるさまざまな「つながり」という視点から集められた作品を見ることができます。幅広いジャンルの作品が展示されているので、あまりアートに関心がない方でもお気に入りの作品が見つかるかもしれません。
コンテンツ
インターネットや交通網の発達によって人・モノ・金・情報の流通が容易に・活発になりグローバル化が進んでいく現代。世界との距離が近くなり、便利になっていく一方で、個人や政治、経済、宗教などの点で「分断」が発生するという問題もおこっています。
そうしたなかで、作品を通して「つながり」を表現することで、現代社会に対する問題提起や新しい切り口からの視点を提示するというのが本展の狙いだそうです。
私は現代アートの役割の一つとして、現在の事象やこれから起こるかもしれない未来に対する批判を行うことだと考えています。なので、現代アートの魅力をストレートに感じることができるこの「六本木クロッシング2019展」は、アート大好きさんから初心者さんまで広く楽しむことができる機会となるはずです。
本展では、作品を紐解くキーワードが3つ提示されています。各作品をキーワードになぞらえて考えていくことで、より深く楽しむことができますよ。
人工知能やロボット、生命科学などの理系分野の進歩は近年特にめまぐるしく、専門的な知識がない人にとっては遠い世界での話のように感じるかもしれません。でも実は私たちの生活のすぐそばにまで影響を与えているのです。
そうしたテクノロジーを使ってアート作品を表現することで、遠いように感じるテクノロジーと私たち自身の関係について、考え直す機会を与えてくれます。
人間のような顔や手を持ちながら、でもむきだしの機械の身体を持つAIロボット。2体はいるかのような音声を発しながらコミュニケーションしているようにも見えます。
平凡な風景が独自のアルゴリズムによって変換されていき、まったく別の見た目へと変わっていく映像作品です。普段目にしている景色もちょっとした視点のずれで変わりゆく可能性を秘めていることを感じさせられました。
社会学的な観点から現代社会への気づきを与えてくれるパートです。3つのなかで一番身近に感じることができるパートですが、何気なく生活している普段の生活も、作品を通して視点を変えることで新たな一面が見えてきます。
2020年東京オリンピックに湧く現代ですが、光には影の面も伴います。オリンピック開催を違う視点から眺めることができる、猫のフィギュアのインスタレーション作品です。
写真は撮れませんでしたが田村友一郎の映像作品『MJ』も印象的でした。マイケル・ジャクソンが来日したときの話に始まり、「ムーンウォーク」、人類の月面着陸、古代神話へとテーマが広がっていき、私たちの進歩について問題を投げかけてきます。
一見、まったく関係がないようなものでもアーティストの手にかかると「つながり」が生まれます。異なるものをあえてつなげることで、新しい価値が生み出されていきます。
貯水池にゴムボートで侵入し、そこで利用したボートや木材、ドラム缶などを組み合わせた作品。天井ぎりぎりにまで積み上げられた作品は、無秩序にもみえますが、一緒に展示されている映像と一緒に見ることで、そのつながりを感じることができます。
イラストからインスタレーション、映像作品まで、テクノロジーを駆使した作品から既製品を組み合わせた作品まで本当に幅広いジャンルの作品が揃った展示会でした。アーティストが全員日本生まれということもあり、作品のテーマに共感しやすいという点もありました。
ここで紹介した以外にも特に、林千歩『人工的な恋人と本当の愛-Artificial Lover & True Love-』という作品が気になっているので、また改めて書いていければと思います。陶芸教室で働く既婚のAIロボットとの不倫恋愛という変わった属性モリモリな作品でした笑
5月末まで開催されているので、ぜひ一度行ってみてください!5月25・26日には六本木アートナイト2019も開催されるので、それに合わせて足を運んでみるのもいいかもしれませんよ。
開催期間:2019年2月9日〜5月26日
開催場所:森美術館 (六本木ヒルズ森タワー53F)
料金:
一般 1,800円
学生(高校・大学生)1,200円出展アーティスト:
荒神明香、佐藤雅晴、竹川宣彰、津田道子、林千歩、平川紀道
ほか全25組